大気圏突入

畦地悠太(3年/DF/小松高校)

北海道大学サッカー部は遅刻に厳しい。数分数秒でも遅刻することは許されず、遅刻した者には厳しい罰が下される。世界で1番怠惰な生物である大学生を正すためには必要な規則だと理解はできるが、罰の重さには納得していない。公開謝罪、ビブス洗濯、0年目としての活動。耐え難いことばかりだ。誰かが遅刻をすると、その度にチーム全体が弛んでいるから全員の責任だという雰囲気が流れ始める。この時、僕は遅刻なんて誰にでもあるのだから軽く流せばいいんじゃないかと思う。とても思う。なぜそう思うのか。それは僕が遅刻常習犯だったからだ。

記憶は高校2年の頃に遡る。毎週土曜に小松高校のグラウンドで行われる練習に必ずと言っていいほど遅刻していた。家から高校まで自転車で30分ほどかかるので練習が始まる40分ぐらい前には出発しておきたい。しかし僕は練習が始まる20分ぐらい前に出発していた。当然間に合うはずもなくグラウンドに着くと仲間たちがすでにアップを始めている。そして僕は悠々とその集団に混ざっていく(悠太の悠はここから来た)。強豪校の練習ならば鬼監督が僕を見つけ、練習参加させないだろう。しかし、僕たちの顧問は小松高校が誇る爽やかイケメン陽キャ教師こと酒匂先生だったので、お〜いアゼチまた遅刻か〜?という軽いいじりが飛んでくるだけだった。遅刻癖は治らず、日々悪化していくだけだった。

遅刻癖はピッチ外にも及んだ。松高の生徒は8時15分までに登校しなければならない。しかし僕は25分ぐらいに悪気もなく登校していた。
なぜ治さなかったのか。今東京に住んでいる僕の親友もその時間ぐらいに登校していたことがかなり大きい。週3ぐらいはヤツと共に教室に入っていた。多分31Hの皆んなからはおそらく五条悟と夏油傑に見えていたであろう。問題児2人、そして怠惰。しかも教室に待ち構える担任は小松高校が誇る女子生徒、お母様方のハートを射止める爆モテ教師(バンクーバーに留学経験あり)こと酒匂先生だったので、また軽いいじりが飛んでくるだけだった。癖は加速し、僕には遅刻キャラが定着した。遅刻キャラは楽なものでちょっとでも学校に早く来ようものなら褒められる。こうして僕は社会を舐め腐った。

KOMATSUが作り上げた遅刻常習者は札幌に来てからとても困った。毎度の如く、授業に遅刻した。大学の授業は受講者が沢山いる場合、座る席がなくなることがある。そのため数少ない席を探すことを諦め、帰ったことが多々ある。まあしょうがないかと過ごしていた。
 
しかし北大サッカー部ではこれが全く通用しなかった。遅刻キャラを生み出すことは許さず、誰かが誰かを遅刻しないかを見張るデスマッチが開催されていた。こんな環境でも癖は治らないもので、一年の12月から二年の8月にかけて遅刻を数回ほどした。同期にはめちゃめちゃに詰められ、先輩には強めに注意されてしまった。規則の鬼こと下田和舞には虫を見るかのような目で見られ、正論ゴリラこと門陽平には小言マシンガンをぶっ放された。どんな言い訳をしても全くいなすことはできず、正論が僕の心を突き刺した。
そして僕は、遅刻は周りの信用を失い、呆れられ、頼りにならない人間だと決定されること、周りの人に迷惑をかけていることに気付いた。小学生でも気付くようなことにようやく気付いたのである。しかも2年の夏、20歳で。

そこからの僕は凄まじかった。練習の遅刻は全くせず、授業にも遅刻しない。なんと早く登校すると好きな席に座れるのである。最高だ。誰かからすれば当たり前のことをなぜ誇らしく言っているのかと思うかもしれない。しかし僕にとってはとても重要な成長だ。こうした成長が未来の自分に繋がっていくのだ。もう遅刻をしない。そう心に誓ったのだ。大気圏に突入し、急速に発光する隕石のように、僕は成長していく。

成長させてくれてありがとう
北海道大学サッカー部
そして、さようなら
遅刻常習犯の僕

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次