小林翔悟(4年/GK/魚津高校)
引退ブログを書かねばならない。
非常に億劫な話である。
日本中で揚げ足鳥達が群がり、一人賛否が横行するこの令和の時代においてSNS上に自身の赤裸々な文章を書くことなど、既婚俳優が密かに愛人と逢瀬を重ねることと同じようなものではないか。
このように冒頭の文章を組み立てている最中にも、
「こいつ何言ってんの?」だったりとか、
「自意識過剰。」などとやはりMr.批評家I内君をはじめとする空腹の沢蟹達が集結するのであるが、そんなことさえも感謝してしまおう。これも私にとって全て正しい。
さて、徒然なるままに筆を進めていきたいところであるが、此処は想像していたよりも厳正な場である。元北大サッカー部、現東大院M1のY田君は引退ブログのスタートが昨年よりも遅れた事を嘆いているらしい。遠く離れた本郷三丁目からの咆哮が此処札幌に轟くくらいには諸先輩方はこの引退ブログというものを待望しているのだ。ただ単にY田君が口煩いだけという可能性も高いが。早よ飯行こな、Yっしー。斯く言う私も毎年の引退ブログを心から愉しむ太客である。というか引退ブログに限らず、主将S田君と並んで部員ブログをこよなく愛するブログ評論家である。そんな男がいい加減な文章を書いて良い訳があるまい。再びI内君の餌食になりそうなプレッシャーを自身に与えた上で、内容に突入していこうと思う。
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私は北大サッカー部に入ったことを後悔している。
「なんでサッカーやってるんだろう。」
大学サッカー生活で幾度となくこの問いに衝突した。
私はサッカーを愛していた。記憶に残存している中で最古のものである、2010南アフリカ W杯。列島を歓喜に包み込んだサムライ達に憧れサッカーを始めた。毎日が新鮮でサッカーにのめり込んだ。小中はある程度成績を残した。しかし高校では環境を言い訳に全力で取り組まなくなった。だからこそ大学で最後もう一度サッカーと向き合って高校の時の未練を晴らしたかった。綺麗にサッカーにけじめをつけたかった。
初めて北大サッカー部の練習に参加した日のことが昨日のことのように鮮明に思い出される。
行き方がわかりづらい屋内練習場。
高校の同期に雰囲気がめちゃ似てるT田君。そのT田君にそっくりなS楽君。
やたらと声が大きい先輩GK。
速すぎる先輩方のシュート。
遅すぎる自分の動き。
会場に充満する熱量。
全てに圧倒された。ボールを触るのが怖くてゲームはまさかの不参加を申し出る始末。先輩マネと隅っこで談笑していた時間が1番楽しかった。
怒涛の1年目は良い記憶など殆どない。
まず札幌の街が好きじゃなかった。地面はガタガタ。碁盤の目状に整備された無機質な街。朝練に向かう際に目に入る東区の廃れた風景。こんな街だからI本君みたいなバケモノが育つのだろう。
夜10時にベッドに入るも不安でうまく眠れない。朝4時に目を覚まし、絶望の1日の始まり。うっすらと明かりの差す閑散とした街をただ自転車でひた走る。30分間のこの時間が束の間の安らぎと迫り来る悪夢とで混沌とする。
練習が始まれば嫌ほど見せつけられる他の選手との差。1年目ながらにK川君やI下君、S田君、当時アフロのS石君らエリートは普通にTOPでやっていて驚いた。
一方の私はというと、先輩達が怖くて怖くて仕方なくて、怒られないように、迷惑をかけないように必死だった。
昨日と同じように何もかもがうまく行かなくて、練習後知らず知らずのうちに涙が溢れてくる。
同じIリーグBに配属されたN方君やI田君、S木君あたりは楽しそうにしてたけど正直意味が分からなかった。
あれだけ好きだったサッカーが嫌いになりそうで、怖くなった。
Instagramを見ると高校時代の友人が所謂青春というような生活を送っていたり、将来を見据えて海外での経験を積んでいたりする。
一方私と言えば、毎日兵隊のような暮らしの中でこれまでの人生と変わらずボールと戯れているのである。
それまでの人生では味わったことのない自由な時間。千差万別、十人十色の大学生活において、高校まで継続してきたサッカーに大部分を捧げるというのは中々にリスキーであり、ガラパコス化された選択に思えてくるのである。
これまでの人生はレールに乗って生きていたからこそ、正解のない世界に放流された途端、今までの自分を見失いそうになった。でもこのまま逃げたらサッカーと綺麗にお別れできなくなる気がしたから、未練が残る気がしたから留まりたかった。
だから正直騙し騙しやっていた節がある。これが自分の正解であると。今はサッカーに熱中して酸いも甘いも味わっていくことが自分に最もプラスであると言い聞かせた。ただそこに確証などはなかったから、懐疑的な感情が浮かんではそれを押し殺した。
大一番に勝利したり、自分の満足できるパフォーマンスができたりすると嬉しいし、やっぱりサッカーいいなって思う。しかしそれは一時的であり、常に片隅には疑問や不安があった。
眠れない夜に「サッカーを辞める」という決断をするという方に天秤が傾くこともあった。T橋君みたいに一度休部しようかとも考えた。それだけ一進一退の攻防は続いた。
その問答の繰り返しはどれだけ時が流れても決着はつきそうになかった。勝負の日々の中でサッカーと腹を据えて向き合いたいという意に反して、いつまで経っても疑念が靴の裏についたガムくらい粘り強くついてくる。そうして答えのない果てしない空間の中でぐるぐると思考を巡らせるのである。
そうして気づけば引退の時を迎えようとしていた。
私が最後に出場した試合。
2025/10/25 vs東海。
別に最後だからと言って特別な感情はなかったし、その日は後半からの出番だと知っていたからいつもよりリラックスしていた。とりあえず勝ってる状態で回してくれと。それしか思っていなかった。試合は1-1の同点で前半終了。思い通りに事は進まないことも知ってる。とりあえず自分がやれることを、やるだけ。後はみんなが勝ちに導いてくれる。実力は拮抗し五分五分の展開が続く。ひりつくような緊張感が心地良い。いつにも増して頼もしすぎる同期たち。O川君だけはいつも通り自己満ドリブルからのボールロスト。あとM田君はちょっと決定機外しすぎか。そんな私たち老体を介護するかのように黒子に徹する後輩たち。Y澤君とN田君は最高だったよ。好き。少し目線を移すと全力で応援してくれる仲間達。一挙手一投足にオーバーなくらい反応してくれる。
「小林翔悟 お前が砦さ 勝利のために強く強く」
みんな大好きなこのチャントも聞こえてくる。
即興で作成されたであろうよくわからないチャントも。チーム友達ならぬショウゴコバヤシ。
ニヤケが止まらん。
なんだよこれ。先言っといてくれよ。
みんな最高だよ。終わりたくない。
ずっとサッカーしてたい。
レフェリー笛吹かないで。
薄暗い秋空の下、冷えた岩教のグラウンド。ここで絶望も歓喜も味わってきた。全ての記憶が走馬灯の様に駆け巡る。
最後ボールが目の前にこぼれてきてキャッチ。その瞬間試合終了のホイッスルが鳴った。空気読めやレフェリー。とは思ったが、応援の方から愛する後輩GKであるS田君の「おつかれええ!!」が次の瞬間聞こえて、終わりを実感した。
試合後のミーティングで柄にも無く全員の前で泣いた。I本君ほど泣いてはいない。彼はあの週末8Lの涙を流したと云われている。
試合後に泣くのは小学生以来。腐ってた高校時代はそんなことありえない。涙の理由は自分でもよくわからなかったけど、それくらい大学サッカーに熱中していて、この北大サッカー部が好きだったんだとやっとその時に気づいた。
私は北大サッカー部に入ったことを後悔している。
最後の最後にみんなのことを心から大好きだと気づいたから。大学でもサッカーを続けて良かったと確信できたから。
そしてまたサッカーが恋しくなってしまったから。
綺麗にけじめをつけようとか入部の時思ってたけど、そんな事無理だった。いつまで経ってもサッカー馬鹿です。サッカー観戦なり、どんな形であれ死ぬまでサッカーに関わっていくんだと思う。
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両親へ
小学3年から今まで何不自由なくサッカーを続けさせてくれてありがとうございました。大学に来て親元を離れて親の偉大さを知りました。これから少しずつ恩返しをしていけたらと思います。
岡田さんへ
僕たちが2年目の時からサッカー部に携わってくださりありがとうございました。個人的に岡田さんの話し方とか言葉が好きで、試合前のミーティング楽しみにしてました。全国で北大の指揮を執る姿を見せてほしいです。ご家族を大切にしてこれからも北大サッカー部を強くしていってください。
高橋さんへ
1年間と短い間でしたが、お世話になりました。高橋さんのポジティブさと熱量の高さが大好きでした。本当に北大になくてはならない存在だと思います。くだらないことを話したり、だる絡みしたりするのが楽しかったです。これからも北大サッカー部をよろしくお願いします。
後輩諸君へ
シバきたい先輩ランキング1位の芭蕉です。結構この称号気に入ってます。
僕のだる絡みを受け止めてくれてありがとう。愛してるぜ。飯でも行こう。
同期へ
みんな本当にお疲れ様。そしてありがとう。
なんやかんやあったけど結局同期が最高だなと。
最近で言うとマネのA﨑君からの手紙を無くすような畜生だけど受け入れてくれてありがとう。
R丸君の言葉借りるわけじゃないけど、ここが僕の居場所でした。
みんな愛してるぜ。これからもよろしく。
最後に
T市君、ありがとう。
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とにかく笑えれば
最後に笑えれば
答えのない毎日に
ハハハと笑えれば
#1 小林翔悟
