説田周(4年/DFW/横浜翠嵐高校)
同期のブログが次々と公開されてきた。キャプテンマークを巻いた写真が何人もいて、誰が主将かわからない。市本脩真の言う自称キャプテンの肩書きがそろそろ現実になりそうだ(彼との居残り1対1練習は俺の勝ちにて決着)。どれも言葉選びや内容にその人らしさがあって、ブログを読むのが好きな俺にとってここ最近のささやかな楽しみだった。みんなはきっとサッカー部にいる意味を悩みながら、それでも駆け抜けた４年間だったのだろう。
俺はどんな4年間だっただろうか。ずいぶんいろんな経験をしたから１年生からじっくり書き出してみることにする。
＊以下、出来事を自己中心的に書いたため共感性には乏しく長い文章になります。
初めて練習に参加したのは基礎クラスのオリエンテーションがあった日。自己紹介でサッカー部だった人を誘ってみたけど撃沈して仕方なく1人で練習に行った。パスはきれいでシュートは速い、身体が強くてスピードもある。大学サッカーはレベルが高いと思ったし、すごくワクワクしたのを覚えている。
同期は怖くて最初はあまりしゃべれなかった。特にアフロ、高身長、熊本弁、関西弁、湘南、シャバ男、彼女見送り号泣倉庫準備サボりの7人。でも慣れてくると優しくて、誰よりもサッカーが好きだと思っていた自分に負けないくらいみんなもサッカーが好きそうだった。
最初のシーズンは北大が１部に昇格した年で、3つのカテゴリーがあり、たくさん試合があった。最初の試合で褒められたのが嬉しくて、そこくらいで北大サッカー部のことが好きになった。
札大と初めて戦ったときは衝撃を受けた。パス回しが早すぎて、小さくてもパワーがあって、ロングシュートがうまい。手も足も出なくて、DFだったけど足を攣って動けなくなった。本当に衝撃的な試合だった。8点取られたけど井田キャプテンにお前は良かったと言われたのが嬉しくもあり不思議でもあった。
函館に前泊して当時一部の函教相手に初勝利を掴んだ。朝の散歩で一発芸を晴将に肩代わりしてもらった。左ウイングバックで出たその試合は戦術理解度の低さゆえに迷惑をかけ、後半からはセンターバックに移動した。朝練では青木さんを抜いたりしたんだけどなぁと呑気なことを思いながら、前半は八木さんにたくさん迷惑をかけたので申し訳ない気持ちになった。数年ぶりに一部で勝利し、先輩は泣いていた。
大臣杯の札大戦や厚別競技場での岩教戦、東北大との定期戦。大きなスタジアムや大応援の中で試合に出ることができ、ピッチに立つ誇りと幸せを目一杯感じていた。
後期リーグも順調に試合に出て存分に大学サッカーに熱中していたのだが、ある日の練習で捻挫をしてしまい、それが1ヶ月くらい治らなかった。旭教との入れ替え戦、それに出たくて直前に復帰したけれどメンバーには入れてもらえなかった。このときは苫小牧でボールボーイをしながら、ちょっぴり悔しかった。
1年時は位置情報アプリ「zenly」を遅刻防止のために学年で共有していた。雨で朝練の中止連絡が入り荷物準備組がロータリーでもっと早く連絡しろよと愚痴を言いながらアプリを開くと、ただ1人、詩竜のアイコンが東雁来へ爆走しているのを見て大笑いした。ぜひ2022/6/29の年目LINEを見返してほしい。
この年は失点に失点を重ね負けに負けまくったけど、1部残留を果たして引退する4年生がカッコよかった。
大学2年のサッカーはなかなか始まらなかった。時々みんなで集まったからさみしくはなかったけど、徐々にサッカーがないのがさみしくなって、ゴールのある公園を及川と椋介と探しに行った。
部活再開後すぐに札大と試合があった。初っ端から猛攻を受け続けた結果、前半でガス欠になり後半はすぐ両足を攣って交代した。非常に情けない姿だったし、前半のパフォーマンスがかなり良かっただけにもったいなかった。この日も8点取られた。
再開後の６月は練習場所が確保されてなくて札幌大谷の少し狭いグラウンドでの練習が増えた。ここで俺はドツボにはまった。ビルドアップが下手な選手が、狭くてプレッシャーが早い中でボールを繋げるわけがない。ほとんどのボールを失い、前線の人からたくさん文句を言われて委縮し、プレーが悪くなっての悪循環が高速回転した。ビルドアップをしようっていう方針はわかったけど俺には実行するのが難しい。そうしているうちにスタメンから外れて「はいはい、なら外れますよ」とふてくされた気持ちになって、岩教戦はベンチでずっと大敗しろって思っていたら、前半は２失点だけだった。もっとやられろよと思った。HTで交代したが、もちろんボールは取られるし、守備すら下手で6失点した。気持ちも沈んで早く試合終わってくれとずっと思っていたし、もうサッカーは楽しくないって帰りの車内で言った。せっかく椋介が学生リーグデビューしたというのに、ずっと愚痴しか言わなくて今振り返ると車内の人には申し訳ない。同期だけの車でよかった。慰めの寿司を４人で食べた。
その試合で怪我したので見学になった。前十字靭帯の怪我により監督をしていた白石に復帰明けからサテライトねって言われて気分が下がった。怪我期間に自分の気持ちを考えた。スタメンに固執しすぎてスタメンかそうじゃないかが全てになっていて、サッカーを楽しもうとしたことが最近ないなと思った。スタメンから落ちたのでもうそういうことは考えなくて良い、楽しくサッカーをする、自分のテンションを下げない、今シーズンはスタメンじゃなくていいっていう風に思うことにした。そしたら気が楽になった。
7月は部活停止関連で遠征ができなくなったので試合がなく、スタメンとかそういうのがない期間だった。流星ビルドという戦術と叶翔が入部してきたことでビルドアップ中だけFWの位置に行くことになり、ビルドアップから解かれた。サッカーを熟知している者たちが考えた結果、このような戦術が生まれるのだからサッカーは自由でおもしろい。俺の運動量は２倍になり、体力だけが伸びていった。
結局サテライトに行くことなく学生リーグに戻り、夜の丘珠Gにてまだ初々しい叶翔と基とともに札大と戦った。試合後の2人の対照的な姿が印象的だった。しばらくして謎の腰の痛みが発生し、新人戦も学生リーグも東北戦もピッチの外から見た。
1ヶ月以上経ったころに痛みが引いてきたのでプレーを再開した。直後の道都戦ではコーナー戦術のひとつ「セツ」でゴールを決めた。ゴールが決まった瞬間はさすがに気持ちよくて、サッカー始めたころの気持ちを思い出した。試合後に叶翔にかけられたジャグの水が冷たかった。
続く東海戦では流星がプレーヤーとして初めてピッチに立ち、タブさんの開始１分のゴールを守りきり、ここでも勝利をつかんだ。きっと格上に勝つ試合ってこの試合みたいに耐え続ける試合なんだと思う。試合終了の笛で温くんは地面を叩いていて、本郷さんは泣いていた。初めて2連勝した。
かろうじて最下位を抜け出して、迎えたチャレンジリーグ。道都戦はシオンとコバショウのせいで手こずったけど、試合終盤に勝ち越し点が入った。国際戦は顔面ブロックをしたり、最後の東海戦ではほぼ点を決めたりできた。
振り返れば個人的にもチームとしても満足のいくシーズンになったと思う。
このシーズンオフに部のルールを破ってしまい、俺らの学年は再び活動停止になった。特に迷惑をかけた１つ上の代にはとても申し訳なかった。
ようやく折り返し。
そんなわけで３年目もスタートに躓く。このあたりでポジションがDFからFWに変わり、また1から大学サッカーが始まった。開幕戦前に膝の横が痛くなって2ヶ月近く離脱した。部活停止期間のトレーニング法やストレッチ不足が原因と思われたが元をたどればルールを破った自分たちが原因になるのだろう。
チームは開幕戦に勝利し、そこから勝ち点を積み重ね、総理大臣杯では全国まであと一歩のところまでいった。出ていないときは負けちまえと相変わらず思っていたけど、毎試合手ごたえを掴んで帰ってくるチームメイトを見ると悪い気分はしなかった。怪我から復帰し、大臣杯を含む数試合の助走期間を経ると、チームは負けが立て込む一方で、自分の調子は上がっていった。FWとして出来るプレーと求められるプレーがようやく理解出来てきて、チャンピオンリーグのすべてでフル出場し、相手チームに認識されるくらいのプレーができた。
この年は人生で初めて賞を獲ることができ、その後は北海道の選抜チームに入って全国規模の大会に出た。
デンソー期間のことを書き始めるとこれまたブログが一個できてしまいそうなので今回も書きません。誰とも馴染めないんじゃないかと思って一人で過ごせるように本を４冊持って行ったけれど、いろんなチームの選手が話しかけてきてくれて、結局最後まで本は読み終わらなかった。
いつしか主将になっており迎えた最後のシーズンは、これまた開幕前に捻挫をして離脱した。開幕戦には間に合ったけれど、試合の日ですら午前練や夜練を見に行ったり、メンバー選考のために映像を見たり、研究室が始まってきたりしたら感覚がおかしくなったようで、去年までしていた試合前の緊張がなくなり、試合後の感情がだいぶ少なくなった。試合が忙しない日常のタスクの一つみたいになってしまったみたいだった。さらに言うと今まで大敗しすぎたから、椋介が失点して何も思わなくなったように、試合に負けてもほとんど何も思わなくなった。自分に不都合なことを心の奥ではヘラヘラと流し続けてきた癖が、ここにきて敗北からも目をそらすように仕向けたのかもしれない。ラストシーズンにして困ったことになった。
大臣杯で勝ち進み、延長戦のラスト10分で全国が見えた時にはさすがに感情が昂ったけど、試合後は負けちゃったなぁと思うくらいだった。
大臣杯明けの学生リーグで捻挫をし、今回は靭帯が切れていたので2ヶ月離脱した。所属カテゴリーが怪我人になると、思いがけず同期と部活中に喋る機会が増え莉久や紘洋と特にしゃべった。同期とは部活外ではよくしゃべったけど部活中はあまり一緒にプレーしなかったし、紅白戦は大体敵だったからどこか新鮮だった。自分がいない時に限って、蒼矢や及川、椋介がTOPに絡んでいた。
復帰後はサッカーの調子が上がらなかった。右足で蹴るのが痛くて、思案に暮れた。それでも復帰したときに和舞が「久しぶりに周君と出来て幸せだった」と言ってくれたのが嬉しくて、左足を練習するしかなくなった。そもそも開幕前に捻挫した時も右足が痛くて左足を練習していたので苦手意識はなかった。オフの日もグラウンドで左足の練習をしてみたら、左足が様になってきて、10月に入るとプレーの調子が上がってきた。いつの間にか残すところあと数週間になっていた。
引退1週間前の岩教戦。新戦術を試したコーナーキック、強烈な打撃音と衝撃で地面にうずくまり、頭から生々しく血が流れた。ボールを叩く感触どころかゴールを決めた事実さえも後から言われて初めて知ったが、叶翔と琥伯が前半終了後に駆けつけてくれたときにはもうだいぶ意識がはっきりしていた。
さすがにここで引退か。そう思ったけれど、4年間ヘディングをし続けた頭はそう簡単に悲鳴を上げず、週明けの火曜練にいつも通り参加した。
最終節、満足のいくプレーはできず不甲斐ない試合だった。応援に挨拶をした後、基が泣いていて、叶翔が泣いていて、啓太が泣いていて、それを見たらどういうわけだか何年かぶりに涙が出てきた。
キャプテンとして、1人のプレーヤーとして、この4年間で何ができたのかわからないし、何を得て、何を残せたのかも未だによくわかっていない。そういうわけだから最終戦後は何を話せばいいか全くわからなかった。仲間とか、成長とか、努力とか、経験とか、熱とか、そういうありきたりなもののようで、俺にはどれもしっくりこなかった。なんというか、それはもっと自分の生き方を決めてしまう覚悟のようなものなんだけど、うまく言葉にできない。これからも考え続けることになりそうだ。
それ以外に熱中することもなかったし、本当に文字通り自分の4年間を捧げた。運動量が足りないと感じれば練習前に雪の積もるグラウンドに行ったりしたし、4年生になってからは、DENSOでプロを目指す札大の選手から学んで食べるものも少し意識したりした。琥伯とはあれこれ文句も言いながら、結局今のチームは2トップが走り続けて戦い続けるしかないと覚悟を決めたりした。最後の試合が思うようにいかず、後悔だって残っている。筋トレだってもっと行けばよかったし、日々のステップワークから基礎練までもっとこだわればよかった。シュート練習なんてもっと必要だったし、映像を見てサッカーを理解しないといけなかった。
感情が揺れ、境遇も揺れながら、最後には自然と涙が出るほどに熱中していた。
今は、この4年間すべての出来事が脳裏に焼き付いて離れない。
最後にお礼を
応援団の皆さん
まっすぐな応援がとても力になりました。ありがとうございました。
岡田さん、高橋さん
雨の日も選手以上に濡れながら一緒に戦うような人たちだから、とても信頼していました。2人のおかげで心に残るラストイヤーになりました。ありがとうございました。
先輩と後輩
年齢でいうと4つ上から3つ下まで、たくさんの人とサッカーをできて楽しかったです。一緒にサッカーをしてくれてありがとうございます。
同期
お疲れ。
#5 説田周