武田椋介(3年/MF/旭川東高校)
僕は今、前十字靭帯を断裂している。傍から見たら気づかないだろう。普通に歩けるし、自転車も問題なく乗れるし、ボールもある程度は蹴れるから。自分でさえ気づかなかったのだから他人が分かるはずないだろう。去年の11月に怪我をして、ほとんど治ったと思って、3月に検査したら‘前十字靭帯断裂’。まったく気づかなかった。靭帯が一本逝っているという状態で、スノーボードとかも行ってたもんだから、それ以上怪我が悪化しなかったのは本当に運が良かったとつくづく思う。まさか、前十字靭帯断裂した状態でそんなことができるなんて思いもしなかった。前十字靭帯の怪我はよく聞くし、身近にも怪我してる人がいて、歩けないくらいの大怪我というイメージが自分の中ではあった。怪我した時は前十字じゃなくてよかったと安堵ししていただけに前十字と判明した時の落胆はデカかった。怪我をしてから前十字靭帯断裂だと気づくまでに4か月近く経ってしまったため、4か月間を本当に無駄にしてしまったと感じたし、今も実際感じている。
羨ましい。怪我をしてからそう思うようになった。部活に行けば、何不自由なくボールを蹴って、走って、跳んでる人たちを見て、自分は怪我をしたのだと改めて実感する。今までのサッカー人生で長期間プレーができなくなるほどの怪我なんてしたことがなかった。それゆえにショックが大きい。しかも、シーズン中に復帰することがほとんど叶わないという事実を簡単には受け止めきることはできない。医者によると、復帰するには最低6か月はかかると言われた。自分だけ特異体質で3か月くらいで治るんじゃねと考えることだってある。そんなことは万に一つもないということを実際には分かっているのにそう考えてしまうのは、そう考えることでしか現実を受け止めきることができないからだろう。部活の準備をして、部活が開始すれば、それをすぐ近くで眺める。本音を言うと、本当に面白くない。楽しくない。つまらない。おそらく、犬がご飯を前にして‘待て’と飼い主に言われ続けているのと同じ感覚だろう。もう空腹すぎて待てないのに飼い主のエゴのためだけに焦らされるのである。犬にとっては最悪だ。自分は犬を飼っていたので、自分も同じことを犬にしていたのだと考えると本当に申し訳ない。ごめんなさい。これからは気を付けます。そんなわけで、練習に行くたびにサッカーできていいなぁ、ボール蹴れていいなぁと感じている。怪我をするということを実感した。この歯がゆい感じを言葉にすることは難しい。
怪我をしてからはいろいろ考えるようになったと思う。そういう意味では怪我をしたことは改めて自分の考えを整理するきっかけを与えてくれたと思う。今シーズンは休部して、サッカーのためじゃなくて他の事に時間を費やそうかとも考えた。自分がプレーできないのに部活に行く必要はない。そもそもサッカーするために部活に入ったわけで、サッカーできないのに部活に行くのは無駄である。しかも、ただ練習見ているだけなんてつまらない。絶対に勉強だったり読書だったりに時間を費やした方が大学生活をより有意義に過ごせる気もする。こういう思いと同時にこんな思いも感じている。部の一員であるのに怪我という理由、サッカーがプレーできないからという理由で、サッカー部のことをなおざりにしてよいものだろうか。例えプレーすることが叶わなくても、組織の一員として部に少しでも貢献するべきだろう。これに関してはどちらかが正しくて、どちらかが間違っているということではないと思う。本当に人それぞれの思いがあって、それぞれの選択が正しいと思う。でも、部活に行って、汗水垂らしてサッカーしてる人たちを見てしまったら、怪我を理由に自分だけぬくぬくしていることはできないと感じてしまう。周りの人が頑張ってるところを見たら、自分も復帰に向けて頑張らなくてはならないと感じてしまうし、そう感じさせてくれる部活には入れて良かった。特に、一緒に過ごしている時間が長いせいか、同期の奴らが点を決めたとき、ナイスセーブをしたとき、いいプレーをしたときなんて半端じゃなく熱い。その熱さが自分も負けてられないと、早く一緒にプレーしたいと思わせてくれる。そんな人たちと出会えたことが本当によかったと感じているし、そんな人たちとプレーずる時間を失ってしまったことが本当に惜しい。この怪我を乗り越えて、より強くなる。そう宣言して終わります。
これからもいろいろあるだろうけど、あと2年よろしく。
#13 武田椋介