本音

僕らがこの大学に入学したとき、ちょうどコロナ禍によりほとんどの部活やサークルが停止の状態だった。7月に一足先に始動したのがこの体育会サッカー部であった。

そのため、サッカーに情熱をもって本気で取り組む人だけが集まるこの部活に、自分たちの代には仕方なく入った人が何人かいた。

自分もそのうちの1人であった。当初大学でサッカーはするつもりがなかったが、1人で過ごすのに耐えきれなくなって入部を決断した。選択肢がなかった僕にはたいした覚悟はなく、軽い気持ちだった。

最初は上手くいっていた。幸運なことに自分のポジションが空いていて、すぐにトップチームに入ることができた。学生リーグに出ることもできた。先輩方から期待もされていた。でも僕はもっとのんびりとサッカーをしたかった。気づいたらサッカーを楽しむ余裕がなくなっていた。

冬になるとコロナにより再び部活が自粛となってしまった。その約5ヶ月間で、トップチームのほとんどの人は自主的にトレーニングに取り組んでいた。僕は何もしなかった。

自粛期間を明けて、先輩が「あいつは全く成長してないな。」と言っているのを聞いてしまったことがあった。
実際に試合に出ている人の中で僕だけが通用していないと感じた。努力するべきなのはわかっていたけれど、逃げたくて仕方がなかった。

そのまま逃げ続けて気づいたら4年目になっていた。ある試合で僕は不甲斐ないプレーをして悔しい思いをしたことがあった。交代させられた後、次できる努力が最後の努力だと思った。最後に何か努力がしたいと思った。今度は逃げてしまわないように、全員の前で毎日練習後にタバタをやると宣言した。

それから怪我で走れなくなるほど自分を追い込むことができた。次第にモチベーションも上がっていって、いつの間にか練習に行くのが楽しみになっていた。

結局、その努力を結果に繋げることはできなかった。それでも、その小さな努力は自分にとってかけがえのない経験だった。このチームに入って良かったな。

最後に、無事引退を迎えることができたのは、間違いなくチームのみんなのおかげだ。
4年間辛いことも多かったけれど、みんなとやるサッカーが最高に楽しかったのは嘘偽りのない僕の本音だ。

みんなありがとう!

#98 八木遂行

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