先日実家に帰省したときに、小学校の卒業文集を発見した。ずっと同じ場所にあったはずなのだが、何故か手に取ったのは始めてだった。そこにはかつての同級生達の将来の夢が書いてあった。何気ない気持ちで読み始めた卒業文集だったがとても面白くて、気づいたら約60人分全ての人の作文を読んでいた。医者を目指している人やエンジニアを目指している人、牛丼屋の店長を目指している人などみんなユニークな夢を持っていた。
もちろん自分の作文も読んだ。小学生の頃の自分が何を書いたのかは読む前からわかっていた。下手くそな文字と拙い文章で自分は「プロサッカー選手になりたい」と書いていた。
小学生の頃は、ただただサッカーを楽しんでいた。サッカーが大好きだった。少年団の練習だけでなく、サッカースクールに行ったり、父が所属しているおっさんサッカーチームの練習について行ったりもしていた。暇があれば家の前の道路でリフティングをして、暗くなってからは家の中で兄とボールを蹴って怒られた。試合ではたくさんゴールを決めていて、チームの中で自分はヒーローだった。毎週末の試合が楽しみだった。この時の夢はプロサッカー選手になることだった。
中学生になると、サッカーが楽しいだけではなくなった。小学生の時よりもレベルの高いチームに入団したが、少年団で身につけた技術はまるで通用しなかった。そのチームの中で自分は至って普通の選手だった。サッカーが上手な人たちと一緒にプレーしたり、小学生時代は全く敵わなかったようなチームに勝利したりするのは楽しかったが、ミスして怒られるのが怖くてボールを受けたくない時期もあった。自分なりにたくさん自主練もしたが、自分とは比べ物にならないほどサッカーが上手な人がごまんといることを知った。チームメイトの半数以上はサッカーの名門校に進学したが、自分はサッカーが特別強いわけではない、普通の公立高校に進学した。自分はいつのまにかプロサッカー選手を目指すことを諦めていた。
高校は部活や学校行事が盛んなところで、学生生活は楽しかった。自分は高校で再びチームの中心となり、主将となった。みんなをうまくまとめることは出来なかったが、チームメイトは不器用な自分についてきてくれ、充実した3年間だった。
しかし、自分が高校のサッカーに満足している中で、サッカーの名門校に進学した中学のチームメイト達は3年間で遥かに自分よりも上達していた。真剣にプロを目指している人もいた。そんな元チームメイト達を見ていると、中学3年生の自分が下した「夢を諦める」という決断を次第に後悔するようになった。もしもプロになれなかったとしても、自分なりに全力でサッカーに取り組めば良かったと思った。もっとサッカーに真摯に取り組めば良かったと思った。高校生の間、ずっと勉強を盾にサッカーから目を逸らしていた気がした。
そして大学。北大に進学した自分は、サッカー部に入るか少し迷っていた。中学、高校での後悔があった自分は、ダラダラとサッカーを続けたくはなかった。やるなら真剣にやりたかったし、中途半端な部活なら入りたくなかった。
そんな気持ちで訪れたサッカー部は、自分の予想を大きく裏切った。
みんな本当に真剣に、楽しそうにサッカーしていた。監督がいないという中で選手達は主体的にサッカーに取り組んでいた。驚くほど上手な人もいた。とても魅力的な集団だった。自分はすぐに入部を決めた。
北大サッカー部での4年間は最高だった。全国から集まった個性豊かなチームメイト達とするサッカーは本当に楽しかった。毎日の練習が待ち遠しかった。サッカーは入部した時よりも確実に上達した。試合中に色々なことを考えられるようにもなった。今まで全く見ることのなかったプロサッカーの試合も少しだけ見るようになり、サッカーの色んな楽しみ方も知った。サッカーがどんどん大好きになっていった。
結局自分はプロサッカー選手にはなれなかった。おそらくはこれからなることも無いだろう。はたから見たら14年間もサッカーを続けてきたくせに夢を叶えられなかったのかと思うかもしれない。プロになれないならサッカーなんてやらないでもっとタメになることをやれと思うかもしれない。
だけど自分はこれからもサッカーを続ける。サッカーが大好きだからサッカーを続ける。この大好きは、小学生の時の大好きとは違う。今の自分は純粋な競技としてのサッカーだけではなく、サッカーを通じて得られる仲間、その仲間達と過ごす何気ない時間や点が入った瞬間のみんなの笑顔。そんなサッカーの全ての側面が大好きなんだ。北大サッカー部での4年間はそんな大事なことを気づかせてくれた。
大学サッカー、残り一週間。
おれはまだまだサッカーが大好きになれる!
#9 阿部 渓輔